クリックで'渋谷川ルネッサンス'へ  19 . Mar Wed  ikeda masaaki
more treesのロゴデザイン

more treesブログでおなじみの小泉均さんはフォントデザイナーだ。more treesおよびmTマークをデザインした人である。昨今の巷にあふれる「キャラ化された」ロゴデザインの類とは明らかに一線を画す。抽象度が高くて、でも人の温もりがあって、風格を感じるこの独特のロゴを、僕ははじめて坂本さんに見せてもらったときからたいへん気に入っている。いまのところ、more treesの活動における

いちばんの財産と言ってよい。小泉さんは、白金にある小さな倉庫を改装したアトリエに、古い金属活字や印刷機械をもちこんで、「フォント教室」をひらいている。授業はマンツーマンが基本だという。

 

080227_095617.jpgこの小泉さんの城ともいうべきアトリエに、デザイナーの卵たちと訪れる機会があった。僕はデザインの専門学校で広告やデザインの概論や歴史について話す講義を受け持っているのだが、その教え子たちだ。学校の課題で小冊子を作ることになり、できたらmore treesについて取材したいのですがと彼らから依頼されたので、それならなにも

more treesの森林再生活動そのものを取り上げるより、その課題をmore treesのロゴデザインについて学ぶ機会にしたらどうかと逆に彼らに提案し、それで小泉さんにご協力いただくことになった。

小泉さんのお話は想像以上におもしろかった。more treesのロゴに込められたデザイン哲学。これはたんに課題として専門学校に提出して終わりというのではもったいない気がした。学生の彼らの力を借りながら「more trees小読本」とし

て事務局で扱う営業ツールにできないかと思った。小泉さんもそれには賛成で、だったら僕が彼らの作る小冊子のデザインをみてあげましょうと申し出ていただいた。思わぬ偉大な先生にめぐまれて、もちろん学生の彼らも大喜びだった。

 

しかし、小泉さんのデザイン道は決して甘いものではなかった。その数日後、彼らが白金のアトリエに持ち込んだ小冊子のデザイン案は、激しく小泉さんの逆鱗に触れた。一見、デザインの初心者にしては小器用にまとめたレイアウト案にみえたのだが、お眼鏡にかなわないどころか小泉さんは声を荒げて突き返した。こんなみっともないものはみたくもないと彼らを前に吐き捨てた。いまどきの若者である彼らは、かつてこれほど人に怒られた経験はないだろう。小泉さんに彼らを出会わせた僕の試みはまったく無駄だったようだ。。。しかし、さすがは僕の教え子!?と言うべきか、泣きべそをかくでも逆ギレするでもなく、彼らは再度チャレンジさせてほしいと言ってきた。小泉さんも、もう一回だけチャンスをくれることになった。

 

怒り心頭ながらも小泉さんが示してくれたいくつかのデザイン道のポイントを手がかりに、彼らがやり直したデザイン案は、こんどは小泉さんを大いに喜ばせた。これならmore treesの冊子として世に出しても恥ずか

しくないかもしれないと。小泉さんに突き放され、そこから這い上がってくる過程で、彼らは小手先でパソコンをいじるだけのデザインから、なにかデザインの本質というものに目覚めたのかもしれない。きっと小泉さんの情熱の核心が伝わったのだろう。彼らにとって得がたい課外授業となったのはまちがいない。小泉さん、ありがとうございました。彼らに代わってお礼します。ほんとうなら高い授業料が払われなければならないのに。。。

 

小泉さんは言う。

「僕は商業デザインはやらないんですよ」

商業デザイン以外のデザインを知らない若い世代の彼らには、おそらく最初はなんのことやらちんぷんかんぷんだったろう。しかし小泉先生の最終講義を経て、彼らは「商業デザインではないデザイン」を学ぶことができたはずだ。商業デザインでなければそれはなんだろう。公共デザイン?職人デザイン?あるいはエコデザイン? こんどまたじっくり考えてみたいと思う。とりあえず、more treesは商業デ

ザインではない。そのことの意味は大きい。「商業主義の世の中をデザインする、商業デザインではないなにか」なのである。そんなコンセプトがmore treesのロゴに宿っている。教え子の彼らといっしょ

に小泉さんの話をききながら、デザインについてちょっとわかったような気になった。

 

 

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comments (2)
坂本龍一 : 2008年3月19日 20:40

いい話しだなあ!
そんなことがあったなんて、池田くんも小泉くんも言ってくれないからな〜。今度その小冊子、見せてね!

坂本

池田さん:坂本さん:

ビックリしました.ちょっとはずかしいですね.コレは.
ぼくはもう大学の先生でないのに,自分の学生でない人たちに「喝」入れちゃって...(ほんと,すみません)
大切なことは,デザインをする姿勢って,きっと音楽を作るときもそうだと思うんですけど,一人(ego)だけで作らない.商業デザインでなくてもクライアントはいらっしゃるわけで...とにかくkokoroがひとつになっていないと...

彼らにはそれが足りなかった.

一人一人それぞれの中にない,そして,5人がひとつになっていない.

作る前の段階の問題だったのです.
若い人は無限大です.きっと,これからでしょう!みんなでがんばりましょう!

==
追記1:正確には,ぼくはフォントデザイナーではないんです...
追記2:「more trees小読本」は池田さん+水谷さん,もちろん坂本さんが入らないと完成しません.ここまで来るのに(いやまだまだかな)いろいろなお話が入った方が!いかがでしょうか?


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