ストーリー

水の上で積み木はできる?奈良県野迫川村でウエルシアユニオン様の親子自然体験ツアーを行いました

 

テーブルの上では簡単に積み上がった積み木も、水に浮かべた途端に言うことを聞いてくれない。奈良県野迫川村にて実施したウエルシアユニオン様の組合員とそのお子様を対象にした親子自然体験ツアー、木育ワークショップでの一幕です。子どもたちが体験したそのささやかな難しさの中に、木を知るヒントが詰まっていました。野迫川村の森と木に触れたツアーの様子をお届けします。

 

雨の中、コナラの森で

2026年8月24日〜25日にかけて実施した本ツアーの参加者は、大人15名、子ども21名。夏休み中の子どもたちも多く、この日を心待ちにしていた様子でした。初日の野迫川村の天気予報は晴れ。ツアー日和となるはずが、現地の天気はまさかの雨。「山の天気は変わりやすい」からなのか、それとも、同行するとなぜか雨が降ると噂の「あめふらしタッキー」こと、more trees 岸卓弥の実力(!?)がまたも発揮されたからなのか…?森の木々にとっては恵みの雨ですが、当初予定していた熊野古道のひとつ、小辺路の散策は見送りとなってしまいました。

それでも移動の道すがら足を止めたのが、コナラの森です。野迫川村では伝統的なシイタケの原木栽培がおこなわれており、シイタケの菌を植え付ける「ほだ木」としてコナラが使われています。しっとりと雨に濡れたコナラの森を背景に、野迫川村役場の小泉潮さんから木の特徴やほだ木などの活用方法について紹介されると、小雨の降る中でも参加者の皆さんは熱心に耳を傾けていました。

 

「ウエルシアユニオンの森」で植林地の見学

続いて向かったのは、イタツゴ村有林。2025年に実施したツアーで組合員の皆さんが実際に植樹体験を行った「ウエルシアユニオンの森」がある場所です。「イタツゴ」という珍しい地名は谷の名称で、植林地もかなりの急斜面にあります。

お天道様への皆さんの願いが通じたのか、天気も徐々に回復し、スタッフも一安心。雲の切れ間から差し込む光に照らされて、雨上がりの森は艶やかな緑色に輝きはじめました。普段とは違う森の表情を見せてくれるのも、「あめふらしタッキー」の実力かもしれません。
ほっと胸をなでおろした岸からは、この地で進める「多様性のある森づくり」や植林地の現状について、また小泉さんからは現場での日頃の活動について説明を行うと、参加者の皆さんからは次々と質問が寄せられました。「植林後は獣害対策をしないと、せっかく植えた苗もすぐにシカに食べられてしまう」という説明に、思わず飛び出したのが「シカって本当にそんなにいるの?」という質問。普段の生活ではなかなか野生のシカを目にする機会がない皆さんにとって、それは意外な事実だったようです。

 

テーブルの上では「楽勝」、水の上では…

森づくりの現場を見学した後は、村内の北今西集会所へと場所を移し、親子で取り組む木育ワークショップを実施しました。会場に準備したのは「木」と「水」。野迫川村の森と川のつながりを感じてもらおうと企画した、「川原樋川(かわらびがわ)の積み木づくり」ワークショップです。木でできた小さな船を水に浮かべ、その上に形や重さの違う積み木を、船が転覆しないように積み上げていく、そんな実験感覚のバランスあそびです。

まずは船に乗せる積み木づくり。講師役を務めたのは、more treesイチの「木材」博士、遠藤智史です。なんと遠藤は元中学教師。さらにおもちゃ美術館で働いていた経験もあるという、木のことも子どものことも知り尽くした頼れる存在です。子どもたちの目線に立ったわかりやすい説明に、みんな楽しそうに作業を進めていきます。

今回積み木に使用した木材は、野迫川村産材を含む奈良県吉野産のスギやヒノキ、そして高野山周辺に自生する日本固有の針葉樹であるコウヤマキ。いずれも耐水性に優れ、水に強い性質を持つ木です。大人がノコギリで切り出したパーツを、子どもたちが紙ヤスリで削って積み木として仕上げていきます。完成した積み木を手に、まずはテーブルの上で練習を始めた子どもたち。軽々と積み上げ、「楽勝だよ」と自信満々の様子です。

準備が整ったところで外に移動し、いよいよ実験開始。水を張った水槽に船を浮かべてみると…子どもたちの表情は一変します。積み木はひとつひとつ重さも大きさも違い、練習のときと同じように積んだつもりでも、船はゆらゆらと揺れて、いとも簡単に倒れてしまいます。

「あれ、おかしいな」「えー、難しい!」――真剣な表情で何度もチャレンジする子、悔しそうな声を上げる子、それぞれの反応がとても印象的でした。自分の手で削った積み木だからこそ、それが水の上でうまくバランスを取ってくれない悔しさも、また格別だったのかもしれません。

 

どんな形?どんなにおい?さまざまな木の紹介

ワークショップの合間には、葉っぱや実のイラスト・特徴が描かれたパネルと、本物の葉っぱを使って、さまざまな木の紹介も行いました。雨で見送りとなった散策中に紹介する予定だった、地域に自生する広葉樹についても、この時間にあわせて取り上げることができました。

子どもたちは葉っぱをじっくり観察し、触ったりにおいを確かめたり。「森の鎮痛剤」とも呼ばれるミズメの葉っぱを手にすると、「湿布のにおいがする」という声が上がるなど、思いがけない発見に目を輝かせる姿も見られました。

more treesがご案内したのは初日のみでしたが、2日目は野迫川村の雲海景勝地を訪れたり、川原樋川で名物のアマゴのつかみ取り体験をしたりと、引き続き村の魅力を満喫していただけたようです。

野迫川村での森づくりは、more treesが地域およびウエルシアユニオン様とともに進めるプロジェクトです。今回のように親子で森を訪れ、自然を五感で感じる体験を通じて、子どもたちに森や木への興味を持ってもらいたい。そして、そんな子どもたちの姿を見守る大人たちにも、あらためて森づくりへの関心を寄せていただければと思っています。
水に浮かぶ船の上でなかなか安定してくれなかった積み木のように、森づくりも一筋縄ではいかないことばかりです。それでも、この日自らの手で木に触れた体験が参加者一人ひとりの心に残り、この村の森の未来につながっていくことを願っています。


more treesは、地域の気候風土に適した樹種を選び植林・育林をする「多様性のある森づくり」、法人参加型の森づくり「企業の森」、クリエイターや地域の職人と協働して木製プロダクトの企画・開発・販売や木質空間づくりを手がける「ものづくり/空間プロデュース」など、「都市と森をつなぐ」をキーワードにした取り組みを行っています。森林保全活動へのご参加、ご支援、ご質問などお気軽にお問い合わせください。

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