ストーリー

「ルートカット」でササに挑む。岩手県住田町で植林計画をまとめました

5月28日、岩手県住田町にて役場や気仙地方森林組合の皆さんとともに2026年度の植林計画について協議しました。植林地では、2025年に取り入れた「ルートカット」の効果を検証。天然更新を阻む手強い相手、「ササ」の地下茎を切断する手法です。ササの脅威と闘った結果はいかに?!植林地の現状や現場での取り組み、検証結果を踏まえてお伝えします。

 

■天然更新を促す「ルートカット」とは? ~ササと闘う植林現場~

住田町での植林は現在、箱根峠と六郎峠の2か所で進めています。2025年度は、箱根峠・六郎峠の両地区で試験的に「ルートカット」による天然更新の補助作業を取り入れました。自然に芽生えた木によって森林再生を図る天然更新は、全面的な植林に比べてコストを抑えることができるうえに種多様性の増加にも効果的です。一方で植林よりも時間がかかるほか、不確実性が高いため、慎重に検討する必要があります。加えて箱根峠や六郎峠のようなササ地では、地下茎で広がるササ類が繁茂することにより樹木の更新が阻害されるといわれています。

▲ササが繁茂する六郎峠(2025年撮影)

ササは地上部を刈り取っても地下茎が生きていれば再び芽を出すため、一度繁茂してしまうと除去が非常に困難です。さらに地下茎は縦横無尽に広がり、苗木の根が養分や水分を奪われるだけでなく、光を遮られた稚樹が育ちにくい環境が生まれます。除草剤に頼らず、人の手で刈り続けるにも限界があり、植林地の管理コストを押し上げる要因にもなっています。

今回、事業コストを下げるための施策で植林と天然更新を併用するにあたり、天然更新を補助する方法として用いたのが「ルートカット」です。これまで1パッチあたり90本植えていたところを30本に減らす代わりに、パッチ内の地表面の搔き起こしを行いました。搔き起こすことで土を露出させ、自然に落ちた種子が発芽しやすい環境を整えます。また、パッチ周囲のササの地下茎をネットに沿って深さ30cmまで切断し、パッチ内での生長を抑制することで天然更新を促します。ササの地下茎の約60%が深さ15cmまでに集中しているという調査結果もあることから、今回の30cmという深さはその大半をカバーする設定になっています。

※この手法については以下を参考にしています。
参考文献:
「刈り払い機による人力かき起こしとルートカッターによるササ地下茎の切断が天然更新に及ぼす効果」

 

■「ルートカット」の効果と2026年度の植林計画

▲奥が通常パッチ、手前がルートカットパッチ。奥は四角いパッチ一面に緑のササが繁茂していますが、手前はルートカットの効果でササの生長を抑えられたことがわかります。

結果として、ルートカットを施したパッチでは、そうでないパッチと比べてパッチ内のササの生長が目に見えて抑えられており、地下茎を切断したことによる一定の効果が確認できました。ササの生長が抑えられることは、稚樹が光や養分を確保しやすくなることを意味しており、今後の天然更新の成否を左右する重要な指標です。

一方で、六郎峠ではルートカットを施したパッチのフェンスが雪の重みで倒壊し、シカが侵入して食害が発生してしまいました。天然更新への効果を正確に評価するためには、獣害の影響を排除した条件での検証が不可欠であり、フェンスの強度など対策を講じた上で引き続き取り組んでいく予定です。

こうした2025年度の試行結果をふまえ、2026年度はルートカットの規模を拡大します。昨年度は1社あたり1パッチのみの実施にとどまり、得られたデータも限られていましたが、今年度は1社あたり2〜4パッチに増やすことで、より多くの条件下でのデータを蓄積し、効果の検証精度を高めていく予定です。

▲左から住田町役場の泉さん、石橋さん、気仙地方森林組合の木下さん。植林計画の策定をはじめ、more treesが進める「多様性のある森づくり」にご協力いただいています。

箱根峠は2021年より株式会社ユナイテッドアローズ様および三井住友カード株式会社様と、六郎峠は2023年より株式会社メンバーズ様と協働で植林を進めてきました。この度、箱根峠での植林が完了したことで、今年度は3社そろって六郎峠での植林を進めていく予定です。

今後も各地域やご協力いただいている方々とともに、各地の特徴や生態系に適した手法を模索しながら、多様性のある森づくりを進めてまいります。


more treesは、地域の気候風土に適した樹種を選び植林・育林をする「多様性のある森づくり」、法人参加型の森づくり「企業の森」、クリエイターや地域の職人と協働して木製プロダクトの企画・開発・販売や木質空間づくりを手がける「ものづくり/空間プロデュース」など、「都市と森をつなぐ」をキーワードにした取り組みを行っています。森林保全活動へのご参加、ご支援、ご質問などお気軽にお問い合わせください。

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