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インドネシアの熱帯雨林に押し寄せる開発の波

東カリマンタン州の商都、バリクパパン

東カリマンタン州の商都、バリクパパン

インドネシア・東カリマンタン州はカリマンタン(ボルネオ)島の東部に位置する州で、天然資源が豊富です。主要都市のバリクパパンは戦前から産油地であったことから、第二次世界大戦で旧日本軍が初期に攻略したほどです。

現在では、石油のほかに天然ガス、石炭を産出します。

こうした豊富な天然資源を背景に東カリマンタン州は経済発展を遂げており、バリクパパンはメガモールやオーシャンビューの高層マンションの建設が進んでいます。いわば資源バブルですね。

忽然と現れた石炭の採掘現場

インドネシアのNGOであるBOS財団(Borneo Orangutan Survival Foundation)が運営するオランウータンのリハビリセンターはSambojaという地区にあり、バリクパパン市内から30kmほど北東、車で1.5時間ほどの郊外にあります。more treesは、2015年からこの地で「オランウータンの森 再生プロジェクト」を進めています

この一帯でも石炭が産出するようで、露天掘りの採掘現場があちこちに散見されます。

BOS財団が所有するリハビリセンターの敷地は1,800ha(東京ドーム約400個分)ありますが、その土地のすぐ北西には、石炭の採掘跡地がありました。そしてその場所を1年ぶりに訪問すると。。。

新たに別の場所が採掘されていたんです。しかも、その現場はBOS財団の土地の境界線ギリギリにまで迫っていました。

奥の森林はBOS財団の敷地。すぐ手前まで石炭の採掘が進んでいる

奥の森林はBOS財団の敷地。すぐ手前まで石炭の採掘が進んでいる

とはいえ、石炭採掘は土地の所有者が政府から許可を得て進めている以上、BOS財団としては異議申し立てはできないようです。

鉱山は本来、採掘が終了した後は埋め戻して植栽し、原状復帰することがインドネシアの法律で定められています。しかし遵守されていない現場も少なくありません。この現場が将来どうなっていくのか、注視する必要があります。

オイルパームのプランテーション

石炭の採掘現場から車でわずか10分ほどしか離れていない場所では、オイルパーム(アブラヤシ)のプランテーションが広がっています。

oil palm plantation east kalimantan

この実と種から採れるパームオイルは、「植物油脂」としてシャンプーや洗剤、チョコレートやポテトチップス、カップ麺など私たちの生活に欠かせない製品の原料になっています。

ここのプランテーションは個人所有のようで、そこまで大規模ではありませんでしたが(おそらく数ヘクタール)、さらに奥地では大手資本による数千ヘクタール規模の大規模なプランテーション開発もザラではありません。

プランテーションの開発は、森林破壊の大きな要因です。

インドネシアの国家防災庁は、2019年に発生した火災の8割が、パームプランテーションの整地・開発を目的とした人為的な火入れによるものと指摘しています。

(参考記事)インドネシア森林火災の関与企業へ邦銀10億ドル融資

私たちが日常的に消費する原料となるパームオイルが、知らず知らずオランウータンの生息地を奪っているかもしれません。

建設が進む高速道路

東カリマンタン州の空の玄関口でもあるバリクパパンは、人口70万人超の商業都市。

一方でサマリンダは東カリマンタン州の州都で、人口84万人のカリマンタン島で最大を誇る都市です。約100km離れているこの2大都市を結ぶ、カリマンタン初の高速道路が建設中です。

highway_balikpapan-samalinda

これまで両都市間の移動は車で3時間ほど要したのですが、高速道路が開通すると1時間で往来できるようです。ちなみにこの高速道路、BOS財団が所有するリハビリセンターの土地の一部をかすめています。

トドメは首都移転

2019年8月、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領はジャカルタから東カリマンタンへの首都移転を発表しました。

(参考記事)インドネシア、首都移転先はカリマンタン島

具体的な予定地とされているのは、一説によるとブキットスハルトという、東カリマンタン州の商都バリクパパンと州都サマリンダの中間地点

※Penajamという、バリクパパン湾を挟んだ南西側の地区に建設されるという説もあります

ちなみにもしブキットスハルトが首都移転先だとしたら、前述したボクらのプロジェクト地があるSamboja地区から直線距離でわずか30kmくらいしか離れていません。

しかも、空の玄関口であるバリクパパンからブキットスハルトにアクセスするには、自ずとSamboja近辺は通り道になります。

仮にブキットスハルトが移転先でなくても、東カリマンタン州のどこかに遷都する以上は、インフラ整備に伴う開発や地価の上昇、人口の増加などの影響は避けられません。

とにかく、これでもか!というくらい、経済発展(開発)と森林(環境)保全とのせめぎあいをまじまじと感じました。

忘れてはいけないのが、石炭やパームオイルは、我々が無意識に消費しているものであること。石炭火力は未だに日本の電力の3割を担ってますし(それはそれで問題ですが)、パームオイルそのものはスーパーやコンビニなどで買える油ではないものの、BtoBtoCで、もしくは加工された状態で購入しているわけです。

今の社会では、こうしたサプライチェーンがブラックボックス化されがちですが、遠く離れた熱帯雨林の減少も、こうした私たちの日々の消費が少なからず影響を与えていることは間違いありません。

 

水谷

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