ストーリー

森の多様性を都会のオフィスへ。22種の広葉樹でつくる「irodori」テーブルができるまで

今年2月、more treesは新たなオフィスへと移転しました。すこし部屋が増えた分、ミーティングテーブルが足りません。「せっかくなら、ただのテーブルではなく、more treesらしいものにしたい」。スタッフのひとことからテーブルづくりの物語は動きはじめました。

 

“森の多様性をそのままに”――アイデアの原点

その言葉を口にしたのは、スタッフの遠藤くんです。岐阜県立森林文化アカデミーで森林や木材利用について学び、「東京おもちゃ美術館」を運営する認定NPO法人芸術と遊び創造協会で木育推進事業に従事。さらに学校法人自由学園中等部では技術科の教師として木工を教えるなど、乳児から大人まで多世代を対象に木と関わるさまざまな活動をしてきた経験の持ち主です。遠藤くんだからこそ、芽生えた想いがありました。

「more treesの活動の中心にあるのは【多様性のある森づくり】。それにつながる、多様な樹種を用いたテーブルにしませんか」

彼の提案にほかのスタッフも賛成し、テーブルづくりがスタートしました。

 

まずは木を探すところから

しかし、いきなり壁が立ちはだかります。多様な樹種を用いた商品は市場にほとんど流通していないため、自力でつくらねばなりません。まずは素材集めが必要。私たちは木を探すところから始めました。

「みなさん、このなかから好きな樹種を2つ選んでください!」

more treesの活動地に縁のある樹種を遠藤くんがリストアップしてくれ、スタッフひとりひとりが自らの想いを重ねて樹種を選びます。また、私たちのテーブル制作の話を知った地域の方から「木材を提供したい」というありがたい申し出もあり、地域とのつながりの中でこのプロジェクトが広がっていきました。

高知県梼原町のイスノキ、宮崎県諸塚村のコナラやクヌギ、宮崎県都城市のイチイガシ、長野県木祖村のキハダ……

最終的に、22種類もの広葉樹が集まりました。

 

熟練の職人との共同作業

集めた木材はすべて岐阜県郡上市の白鳥林工協業組合に送りました。森と木を活かすプロフェッショナル集団で、遠藤くんが過去に広葉樹を活かすプロジェクトをご一緒していたご縁から、今回の企画でもお力添えいただくことに。

新調するテーブルは2台。使う部屋の大きさに合わせてテーブルのサイズを決めました。白鳥林工に届けられたまだ皮がついている状態の木を、職人さんが平らで直角が出るように加工する「木取り」を行い、more treesのスタッフ側では異なる樹種をどのように並べていくかを検討します。スタッフの岸がレイアウトの素案を作成し、宮﨑と勝亦が白鳥林工を訪ねて「模様合わせ」を行いました。

このあとは板と板をぴたりとくっつけていく「はぎ合わせ」へ。高度な技術を要する工程ですが、熟練の職人の手で美しく加工され、唯一無二の天板が生まれました。

 

天板に込めた森の景色

こうして完成した2台のテーブルに、私たちはふたつの景色を表現しました。

Vertical Japan Forest 〜谷間から稜線へ、標高が描く日本の森
中央のハンノキを谷に見立て、外側に向かって標高が上がっていく構成です。花を咲かせる木、鮮やかな樹皮を持つ木、バットやこけしに使われる木など、木の特徴や魅力が際立つよう配置と組み合わせを工夫しました。

使った樹種:
ケンポナシ、キハダ、ウワミズザクラ、ミズメ、カツラ、ハンノキ、トチノキ、アオダモ、イタヤカエデ、ムクノキ、オニグルミ

Horizontal Japan Forest ~南から北へ、緯度が紡ぐ日本の森~
オオウラジロノキを中央の尾根とし、北と南、それぞれの森林帯を表現しました。日本列島の縮図のように暖温帯から冷温帯へと移り変わる木々の表情を感じられる構成です。

使った樹種:
イチイガシ、クリ、オオウラジロノキ、ミズナラ、イヌエンジュ、ブナ、ハリギリ、ホオノキ、ヤマザクラ、コナラ、イスノキ

オフィスに運び込まれたテーブルを見て、スタッフ一同、感激!さっそく“森を囲んで”お客様との打ち合わせや社内ミーティングを行っています。制作をリードした遠藤くんに感想をききました。

「国産の広葉樹材は、スギやヒノキなどの針葉樹と異なり、安定した生産や収穫が行われていません。二次の皆伐や土木事現場から偶発的に搬出された丸太の一部が製材品として流通するのが現状です。そのため特定の広葉樹種を求め続けることは、資源の収奪につながる可能性があります。だからこそ、今ある木を、ありのままに活かす、という視点で広葉樹の木材を利用していくことの意義を改めて感じました」(遠藤)

最後に、遠藤くんがテーブルに「irodori(彩り)」という名前を付けました。色とりどりの木が、それぞれの個性を輝かせながら共にある。一般には避けられがちな節や白太も、すべてが森の一部。それはまさに、私たちが目指す森の姿です。

森から離れた都会の日常であっても、さまざまな樹種が自然の中で生きていた証を感じることができるirodoriテーブル。お近くにお越しの際は、ぜひmore treesのオフィスへ多様性のある森を感じにいらしてください。

 


more treesではさまざまなシーンで国産材利用をサポートしています。イベントやキャンペーン用ノベルティの企画、商品の開発、オフィス・店舗のインテリアや什器の製作、端材アップサイクルや素材調達、空間の内装デザインや木質化、木材利用に関わる大小イベントの監修など、ご要望にあわせて幅広く対応しておりますので、ぜひご相談ください。

≫詳しくは「木材利用」ページへ

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