山林火災から1年──大船渡の山に多様性のある森を
2025年2月、岩手県大船渡市で平成以降最大規模の林野火災が発生し、市の面積の約9%に相当する森林が失われました。more treesにとって気仙地方は、東日本大震災以降、LIFE311被災地支援プロジェクトや住田町での森づくりを通じてつながりを育んできた大切な地域です。行政の災害復旧事業ではカバーしきれない森林の再生を支えたい。その思いから、多くの森づくりパートナーおよび地域のみなさまと連携をして、焼失した森林の再生をめざす「多様性のある森づくり in 大船渡」を開始します。
出火からちょうど1年目となる2026年2月26日、最初の地ごしらえ作業が始まりました。
14年で2度目の大きな喪失
報道で目にしたのは、山に広がる真っ赤な炎、民家にまで迫る火の手でした。延焼は止まらず、不安と恐怖のなか避難指示の対象は4,500人以上に及びました。出火から40日目の4月7日にようやく鎮火宣言が出たものの、1名の尊い命が犠牲となり、200棟以上が焼け落ち、いまなお避難生活を余儀なくされている方が多くいらっしゃいます。
大船渡は、2011年の東日本大震災でも甚大な被害を受けた場所です。津波からの復興を経て、ようやく日常を取り戻しつつあった地域が、再び大きな喪失に直面することになりました。


▲上記4枚、大船渡市提供
▲火の手が迫り放棄せざるを得なかった重機
気仙地方とmore treesのご縁
more treesは、2011年3月11日の東日本大震災の直後から、大船渡に隣接する住田町を拠点に復興支援と森づくりに取り組んできました。住田町は甚大な津波被害を受けたエリアに近接しながらも、内陸に位置し津波被害を免れ、地元の木材を使った木造仮設住宅の建設にいち早く動いた町です。more treesは同町と被災地支援プロジェクト「LIFE311」を立ち上げ、木造仮設住宅の建設費用やペレットストーブの寄贈のために寄付を募りました。最終的に約2億4,200万円の支援金が寄せられ、93棟の仮設住宅に活用いただきました。2020年の仮設住宅閉鎖をもってLIFE311の寄付受付は終了しましたが、このプロジェクトをきっかけに生まれた住田町とのご縁は「多様性のある森づくり」へとつながり、現在も活動を続けています。

▲more trees 創立者 坂本龍一が住田町の木造仮設住宅を訪問

▲住田町の植林地

▲森づくりパートナーの気仙地方森林組合・木下静恵さん(一番右)と樹木医・佐々木理史さん(右から2番目)とともに植樹した苗木の生育調査を行っている様子
▲木造仮設住宅跡地の交流施設「イコウェルすみた」では、地域の方々を巻き込んだ苗木づくりプロジェクト「なえうぇる」を始動。地域づくりの活動をしている⾢サポート・奈良朋彦さん(写真左)のリードで、秋の種採りや春の鉢上げイベントなどを行っています
こうして気仙地方での活動を続けてきたmore treesにとって、大船渡市での山林火災の報は他人事ではありませんでした。
森の再生へ向けて動いた1年
現在、大船渡市では市・県・国が協力して復旧計画を進めていますが、被害を受けた森林のうち公的助成金で植林できる面積はごく一部にとどまっています。more treesはこの1年、現地の視察や地域の方々との対話を重ね、助成金の対象から外れてしまっているエリアの植林を進めていくことを決めました。その経緯をすこし振り返ります。
2025年5月、はじめて現地を訪れた私たちは、黒焦げの被災木を至るところで目撃し、被害の大きさにショックを受けました。

2025年7月には岩手県庁、大船渡市役所、気仙地方森林組合と相次いで打ち合わせを行い、民間による森林再生の取り組みについて前向きな意向を確認。大船渡市長にも面会し、LIFE311から続く気仙地方とのご縁や造林・育苗の実績を伝え「とてもありがたいお話」との言葉をいただきました。
さらに地元の林業会社・立石産業とのつながりも生まれ、植林候補地となる綾里(りょうり)地区の視察が実現します。林冠まで完全に焼失し、焼損度「激」と呼ばれるエリアの状況も確認しました。


2025年8月、綾里地区で里山の保全活動を続ける「大小迫つむぎの家」の千田耕基・永久世さんご夫妻を訪問。15年前にこの地へUターンし、約30ヘクタールの里山を整備して自然共生サイトの認定も受けていますが、震災、コロナ、そして今回の火災と受難が続いていました。「未来の子どもたちに綾里の自然を責任ある形で残していきたい」というご夫妻の思いに深く共感するとともに、綾里地区の文化から地域の植生、山林と海のつながりまで幅広く教えていただきました。

翌日には、釜石地方森林組合より地域に自生する広葉樹の種採りができる場所をご紹介いただき、気仙沼市の御崎神社では実際にタブノキの実生苗の山引きも行いました。



そして2025年10月、綾里地区の山林所有者にお会いしました。more treesの活動についてご説明し、被災した森林の再生プロジェクトにご賛同を得たため、2026年より「多様性のある森づくり」を進めていくことが決まりました。
単一樹種ではない、多様性のある森へ
日本の森林には、木材生産を目的として針葉樹が一斉に植えられた時期があります。もともとの植生を無視して植えた土地も多く、森林全体の約4割を針葉樹人工林が占めています。しかし担い手不足や木材価格の低迷により手入れが行き届かず荒廃してしまう人工林は、全国的な課題です。大船渡を含む岩手県沿岸部もスギやマツの単一人工林が多く、それが火災リスクの高さや生態系の脆弱さにつながっていたとも指摘されています。
more treesは、何がなんでも針葉樹を植えるという方針ではなく、その土地にもともと自生してきた樹種を中心にした「多様性のある森づくり」を提案してきました。今回の大船渡でも、周辺に自生するコナラなど複数の広葉樹を選んで植えていく予定です。また、多様な樹種が育つ森は、多くの生きものの棲みかとなり豊かな水を海へと届けます。森と海が一体となって文化や産業を育んできた大船渡のまちだからこそ、多様性豊かな森林を育むことは、そこで生きる人々の心や産業、地域コミュニティの復興・再生にも貢献すると考えています。
▲カキ養殖の筏が浮かぶ広田湾
現場で施業を担っていただくのは、more treesの森づくりパートナーとして協働している森林再生の専門集団・青葉組です。伐採跡地や放置林などの荒廃地を引き取り、植林・育林・湿地や草地の再生など、その土地に適した自然再生を行ってきた青葉組は、火災発生後の2025年8月にいち早く大船渡に拠点を開設し、山林所有者との対話を重ねながら約110ヘクタール超(登記簿面積ベース)の山林を集約、2026年1月からは社員が現地に移住して再生の体制を整えています。
地元の種から苗木を育てる
植林には苗木が必要です。more treesは、地域外の苗木を持ち込むことで起こりうる遺伝子攪乱のリスクを回避するため、植林地と同じエリアで採れた種から育てた「地域性苗木」を使うことを大切にしています。2025年の秋には大船渡周辺で種採りを行い、種を蒔きました。これらは今春の植林には間に合いませんが、2〜3年後の植林で使える見込みです。
▲住田町での育苗プロジェクト「なえうぇる」をリードする⾢サポート・奈良朋彦さんが、大船渡向けの苗木づくりについてもサポートしてくださっています
火災から1年目の日に、最初の一歩を
2026年2月26日、火災からちょうど1年となる本日、現地での地ごしらえ(植林のための準備作業)が始まりました。more trees は、LIFE311から続く気仙地方とのご縁を大切にしながら、多くの森づくりパートナーのみなさま、そして地域の方々とともに「多様性のある森づくり in 大船渡」に取り組んでまいります。
▼寄付はこちらで受け付けています
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②Global Givingのwebサイト(英語)
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