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植林に欠かせない3つの要素とは?

木を植えるのは簡単なようで、実際はいくつかの条件が整わないと実行できません。
結論からすると、「多様性のある森づくり」を進めるうえで特に欠かせないのが、

①土地  ②人  ③苗木

の3つの要素です。いずれも当たり前の条件に思われるかもしれませんが、実はこれらが揃わないがゆえに実行に移すことができないケースは少なからずあります。

ではそれぞれについて掘り下げてみたいと思います

①土地
 日本の森林の4割を占めるスギやヒノキなどの人工林は、その多くが植林されて50~70年が経ち伐採(収穫)可能な時期を迎えています。こうしたことから近年では全国で人工林の伐採(皆伐) が増加傾向です。

伐採(皆伐)面積は増加傾向にあるので、植林のポテンシャルがあることは事実です。しかし土地の所有者が誰なのかを知る必要があります。
所有者が国や県、市町村などの行政や財産区など公共性が高いセクターの場合、土地の所有権や施業ポリシーが将来に渡り急変するリスクは小さいのでさほど心配する必要はありません。
一方で個人所有者の土地の場合はやや注意が必要です。
もし地権者と植林の合意形成がなされたとしても、たとえばその地権者が亡くなって息子さんに山林が相続された途端、理解が得られなくなる可能性が無いとも言えません。
もしくはメガソーラーに転換したほうが収益性が高いからという理由で、これまでの方針が覆されることだって考えられます。

こうしたことから、仮に再造林放棄地があったとしても、その土地が果たして永続性が担保されているかどうかが鍵となります。ちなみに個人所有の山林の場合、地上権の設定などによって永続性を確保する方法も考えられます。

全国的に増えている皆伐地

②人
 植林には、植える前の下準備である地拵え、そして植栽、さらにはその後の定期的な草刈りなどの育林、獣害対策などが必要です。それを中心的に担う人は、地域外からのボランティアではなく地元の人であるのが理想であり、さらにそれはボランティアではなく生業の一つであることが持続可能であると私たちは考えています。
しかし、近年の林業においては間伐・主伐やそれに伴う造材がメインとなっており、森林組合や林業事業体の作業班はその領域を担う最低限の人材で回しているため、なかなか植林の分野に人を割けないことも多々あります。このように人の確保も欠かせない要素です。

③苗木
 意外と盲点なのが、苗木です。
この半世紀、日本で「植林」といえば針葉樹であるスギやヒノキ、カラマツなどが主流でした。こうした樹種は、各地で苗木の生産・供給体制が確立されています。
一方で広葉樹の苗木は針葉樹に比べてまだまだニーズが少ないことから、供給は不安定です。本来、苗木は地元産が望ましいとされていますが、希望する樹種の苗木がそもそも調達できなかったり、調達できたとしても遠く県外から取り寄せざるを得ないケースもあります。
※苗木は地元産が望ましい理由については別コラムでお伝えします

このように、「土地」「人」「苗木」の三拍子が揃っていないと植林は実行に移せません。

実際に、土地や人が確保できたのに、苗木が十分に調達できなかったという理由で計画の半分程度の面積しか植林できなかったことや、土地や苗木の調達は問題なくても、それを実行する人が確保できずに植栽が進まないケースもあります。

more treesでは、これら3つの要素を満たす地域を増やすために、各地で視察研修会やワークショップを実施しています。

※3つの要素の他に「資金」も必要ですが、本稿では省略しました

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