ストーリー

【森づくりパートナーの声 ♯04】株式会社ミチルワグループ  笹嶋正吾さん

more treesの森づくりは、立場の異なるたくさんの人々の手で成り立っています。木を植え育てる人、木を活かしてものづくりをする人、地域に暮らす人、都市から森を支える人。みなさんとの協働があってこそ、“都市と森をつなぐ”森づくりは続いていきます。連載「森づくりパートナーの声」では、more trees と活動をご一緒いただいているパートナーの方々に、森づくりへの思いや今後の期待や挑戦についてお話を伺います。

  

―普段はどのようなお仕事をされていますか。 

障害福祉を生業とするミチルワグループで、新規事業開発を担当しています。具体的には障害者採用を推進したい企業に向けた雇用支援サービスの立ち上げです。公的支援の枠組みを飛び出して、地方に住む就職希望の障害者と都市部にある障害者を採用したい企業とをマッチングする仕組みづくりなんですが、企業の森づくりやSDGs活動と障害者雇用を両立させるものです。まずは富山県からスタートし、将来的には全国各地に広げていきます。 

  

―more treesと出会ったきっかけは? 

2023年12月の日経SDGsフォーラムで水谷さんに声をかけたのが最初でした。事業の構想段階でさまざまな可能性を探っているなかで、人手不足の課題がある林業に障害者の活躍の場がつくれないかというリサーチをしていたんです。フォーラムに参加してみたら感動してしまって、そのあとすぐmore treesのオフィスで水谷さんとたっぷり話しました。more treesのことはもちろん、森林や林業の大枠から、林業と福祉の連携の可能性、企業が関わることで変わる未来などの考察もしてくれて、その後のうちの事業開発に大きな影響がありましたね。 

  

―それから各地の森を回られていましたよね。 

森のことも林業も苗木も素人なので一次情報を取りに行きたいと思っていたら、more treesのみなさんにいろいろ誘ってもらったんです。2024年の2月に三重県大台町の視察研修に参加したあと、富山県南砺市、岩手県住田町、高知県梼原町へ行きました。住田町のときは鉢上げイベントがあると宮﨑さんに誘われて。広葉樹の苗木の育て方を調べても情報がなく困っていたタイミングだったのでまたとないチャンス!とついていきました。 

  

―そのときに苗木を持ち帰られたのですよね? 

クヌギとコナラを1トレイずつ、70本くらい。自宅マンションのベランダに置いて、毎朝5時に起きて水やりして観察しました。記録を見ると4月25日に芽が出てきてますね。ちょっとずつ芽生えて、育って。めっちゃくちゃ楽しいですよ、育苗。  

―そうやって育てた苗木が住田町に里帰りしたのが10月の視察研修のときで、車のトランクいっぱいに苗木が積まれていた光景は今でも忘れません。育苗をしてみて発見などありましたか。 

目に見える世界が変わりました。どんぐりもひとつひとつに個性があるんです。すぐ発芽してどんどん育っていくタイプもいれば、この子はダメなのかなと思っていたら3カ月くらい遅れて急に芽が出てきたり。猛暑で日焼けしちゃう子もいれば強い日差しでも全然大丈夫な子もいます。人間と同じじゃん!と。考えてみたら当たり前なんですけど、実際そういう個性を目の当たりにしたのは衝撃でした。樹種だけじゃなく、苗木や種ひとつひとつも多様性があるんですよね。 

 

―そこに林業と福祉、林福連携のヒントが? 

いろいろ学んでいくと、広葉樹の苗木生産は産業化されていないことが分かりました。人手が足りない一次産業のなかでも特に広葉樹の苗木生産は回っていなくて、植えようと思っても苗木がない。そこに障害者が入って仕事として携わることで、広葉樹の苗木生産の道筋を作れないかと思ったんです。さらに僕の本業である、障害のある人の多様な生き方を実現していく手立てのひとつにしていこうというのが、自分で苗木づくりをしてみて辿り着いたことですね。 

  

―たった半年ほどでものすごい変化ですね。 

苗木や森と関わるようになって、自分の暮らしも変わりました。僕はサーフィンをするので毎週海に行くんです。でも豊かな海を守るために自分にできることは?とはあまり考えたことがなかった。ゴミを拾うことくらいでした。でもmore treesと出会って、森と海はつながっているという構造を知り、そこでも見える世界が変わりました。苗木を育てて山に植えたら、20年、30年経って森を形成し、地域の水を育み、暮らしを守り、住田町であれば森からの水が広田湾に流れ込んで僕の大好きな牡蠣を育てるんです。めちゃくちゃ壮大ですよね。ほんの僅かでも自分がそこに関われるというのはすごく価値のあることだし、自分自身が変わります。森林保全やカーボンニュートラルという言葉は知りながらそこまで心が向いていなかった人でも、森づくりをリアルに体験することで自分事になりますね。そうそう、最近僕は木製のものを買おうと思うようになりました。どこの木を使っているのか、FSC認証かといった情報も気にするようになったのと、木製品以外でも共感できる取り組みをしている企業のプロダクトを買おうという気持ちになったり。日々の暮らしが変わりましたね。 

  

―2024年のハイライトは何になりますか。 

ひとつは苗木を自分で育てたこと。もうひとつは、南砺市、島田木材、more treesとミチルワグループで連携協定を結んだことです。上半期で林業や森林保全界隈の方に200人以上は会ったのですが、more treesも島田さんも事業開発の初期フェーズで自分たちのことを受け入れてくれました。さらに行政も巻き込んだパートナーシップを結んでくれたのがすごく嬉しかったです。それだけ期待してもらっているので、僕たちもぜひ応えていきたいですね。 

  

―今後チャレンジしたいことは? 

まずは企業向けの障害者雇用支援サービスを軌道に乗せ、拡大していく道筋をつけていくこと。広葉樹の苗木生産の産業化と障害者雇用を合わせてやっていきたいです。それから育苗の研究もチャレンジしたい。どういう記録をすれば価値を生むのかがまだ分からないんですが、 more treesさんと一緒にいいアウトプットをして、あの子たちの価値を生み出していきたいです。 

  

―笹嶋さんが苗木を「あの子」「この子」と呼ぶのが好きです。最後に、笹嶋さんにとって育苗とは? 

いやあ、100年先の未来に貢献するロマンです!より多くの人に苗木づくりを体験してもらいたいですね。 

インタビュー:2025年2月

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