ストーリー

【森づくりパートナーの声 ♯07】樹木医  佐々木理史さん 

more treesの森づくりは、立場の異なるたくさんの人々の手で成り立っています。木を植え育てる人、木を活かしてものづくりをする人、地域に暮らす人、都市から森を支える人。みなさんとの協働があってこそ、“都市と森をつなぐ”森づくりは続いていきます。連載「森づくりパートナーの声」では、more trees と活動をご一緒いただいているパートナーの方々に、森づくりへの思いや今後の期待や挑戦についてお話を伺います。

  

──樹木医とはどんなお仕事ですか。 

全国に3,400人前後いるんですが、仕事の幅はとても広いです。一番多いのは街路樹や公園の管理をしている方々。桜を専門にしている方もいれば、個人の庭の木の相談に乗る方、子どもたちにわかりやすく伝えることに特化した樹木医もいます。みんなそれぞれのフィールドで頑張っています。 

  

──樹木のどんなところを見ているのですか。 

診断ではまず外観を見ます。根元に腐朽菌が生えていないか、葉の色や枝先の枯れに異常がないかなど。車で通り過ぎただけで葉の異常に気づいて引き返すようなものすごい方もいます(笑)。機械を入れて精密診断に進むことも。枯れた樹木の原因を調べるとか、伐採が決まった樹木に「伐らないでほしい」という声が上がったときに仲立ちするようなこともあります。種を採ったり接ぎ木をしたりして後継樹を育て、「この木を維持するのは難しいけれど子孫をみんなで守っていきましょう」と提案できるのは樹木医ならではだと感じています。 

  

──子どもの頃から樹木に興味が? 

盛岡の牧場の中で育ちました。父親が国の試験牧場に勤めていて、広大な土地のなかに一軒家の官舎が20ほどあって村のようになっていたんです。町からは遠くて友達とはあまり遊べませんでした。そもそも学年に一人くらいしか官舎に住んでいる子どももいなかった。だから猫一匹と僕で森の中をうろうろして、子どもの頃から山や川で遊ぶのが好きだったんです。ただ自然が身近すぎて仕事にしようとは思わなかったです。 

  

──なにが転機になったのでしょうか。 

木曽に祖父の家があるんですが、夏休みにサワガニや水晶を見つけて遊んでいた沢が、ある年に行ったらコンクリートの三面張りになっていました。すごくショックだったんですよ。大人になってそのことが引っかかっていて、水辺の緑化に興味を持ち、ビオトープフォーラムに飛び込んだのがこの世界に入ったきっかけです。その後、緑化・造園の会社に15年ほどいて苗木づくりに関わりました。そのうち樹木のことをもっと学ばなければと思って樹木医の資格を取りました。 

  

──more treesと関わるようになって変化を感じることはありますか。 

都市と森のマッチングというのをすごく意識するようになりました。ふだん都市で働く方たちと接する機会が増えて、こんなにも日常が山の世界と切り離されているんだなと感じたんです。オフィスには虫もいないし窓を開けられない場所もある。ただ、そうなってしまっていることを否定するのではなくて、うまく折り合いをつけながら都市と森を架け橋するお手伝いができたらいいなと思うようになりました。more treesのスタッフの方とお話してみると、こんな情熱を持ってあいだをつなぐ人たちがいるのかととても影響を受けました。 

  

──境界を越えて今まで出会うことのなかった人や業界や土地のあいだをつないでいけるのが樹木医でもありますね。 

似たようなカテゴリーに見えても緑化業界と山林業界ですらそんなに行き来がありません。ましてやIT業界と山の人が結びつく機会はほとんどない。だからこそあいだを取り持って、お互いの良さを活かしながら新しいなにかが生まれたら面白いですよね。 

  

──2025年のハイライトを挙げるとしたら? 

岩手県内の希少植物を独自の技術で増殖・保護している現場に関われたことです。岩手RDBに載っているアツモリソウやミズトンボ種子を採取し発芽・継代を繰り返して、ときどき新しい培地に植え替えながら育てて最終的に野生復帰を目指す試みです。ランの発芽はとても難しく、ほとんど成功例がないような種もあるなか、結果を出している研究者と1年間仕事ができたのは大きな財産です。ここで得た知見は、more trees の現場で希少な樹木を扱う際にも応用できるかもしれません。 

  

──東北の森の未来をどう見ていますか。 

確実に起きていることとして、気候が変わっています。暑くなれば植生も変わるし、ブナのような寒冷地の木は生きづらくなる。森が変われば生き物も変わってきますよね。他方、森と人との関わりが薄れて手入れがされない山が増えています。70代、80代で山の仕事をしている方たちの山の知恵が途切れかけ、森を歩いたことがない子どもが岩手にもたくさんいます。この子たちが大人になる頃にはどうなってしまうのか、瀬戸際の危機感がありますね。 

  

──人が手を引いたら自然に森が戻るでしょうか。 

人がいなくなった土地で自然度が上がった例はあります。ただ、外来種が入り込んで土地に自生していた樹木が育たないとか、ほかの植物を寄せ付けず荒れ地のようになってしまうリスクもあります。最近の大雨を見ても、土壌が流れてしまい放置して森が育っていくのは難しいんじゃないかと思いますね。遷移には安定した時間が必要ですが、それが与えられにくい時代になってきています。人が利用してきた山は、手間ですが人が手を加えていくことが必要だろうと思います。住田町でmore treesさんが取り組んでいるような森づくり――地元の広葉樹から種を採り、苗木を育てて植える――では、単一の人工林とも笹が群生する放置林とも違う森が生まれつつあります。苗木を育てて植えると活着も早いし森になるスピードも変わります。いまは小さな取り組みだと思われるかもしれませんが、地道な関わりがあるからこそ、森は育っていくのではないでしょうか。 

  

──最後に育苗への思いとmore treesに期待することがあれば教えてください。 

育苗は単純に楽しいです。種を採って、春に芽が出てくるのすごく楽しい。僕の場合、他の仕事ではこの楽しさは感じられないんじゃないかな。more treesさんにはこれからも様々なマッチングを続けていただきたいと思いますし、僕もそのお手伝いをしていきたいです。ハチドリの1滴のように、やれることをやっていく。その積み重ねを大事にしたいですね。 

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