ストーリー

大豊作!岩手県住田町でハルニレ、大船渡市でカスミザクラの種採りを行いました

5月28、29日にかけて、岩手県住田町と大船渡市で種採りを行いました。住田町ではハルニレ、大船渡市ではカスミザクラ、それぞれ大豊作と言って差し支えないほどたくさんの種を採ることができました。
しかし苗木を育てるにあたり、集めた種をただ植えればいい、というわけではありません。きちんと発芽できるように「種処理」と呼ばれるさまざまな作業が必要になります。樹種によって異なる種の特徴や処理の方法を、現場の様子とともにお伝えします。

 

■「地域性苗木」として選ばれた、初夏に種を落とす2つの樹種

住田町では、地域に自生する樹木の種から苗木を育てる「地域性苗木づくり」の一環として、2023年より育苗プロジェクト「なえうぇる」に取り組んでいます。5~6月はこの地域に自生するハルニレやサクラ類など一部の樹種が実をつけ種を落とす時期。「なえうぇる」立ち上げ当初からご協力いただいている一般社団法人邑サポートの奈良朋彦さんと伊藤美希子さん、樹木医の佐々木理史さんとともに、住田町ではハルニレ、大船渡市ではカスミザクラの種採りを行いました。

ハルニレは近年数を減らしつつある樹種ですが、東北地方や北海道に古くから自生してきた落葉広葉樹です。またカスミザクラは、サクラの仲間で各地でよく見られる樹木ですが、雑種も多く、地域によって少しずつ性質が異なるのも特徴です。同じく東北でよく見られる近縁種にオオヤマザクラなどがありますが、今回実際に現地で種を採ることができたのはカスミザクラでした。

 

■羽を落とせば、まるでマスタードシード?ハルニレの種づくり

ハルニレの種採りを行ったのは、住田町の種山が原。この地域で何度も種採りを経験している佐々木さんも驚くほど豊作のまさに「当たり年」でした。採取した種は、地域の方々とともに育苗に取り組んでいる交流施設「イコウェルすみた」で処理を行います。

ハルニレの種の周りには、風に乗って遠くまで飛ぶために「翼(よく)」と呼ばれる羽のようなものがついています。今回はこの羽を取り除くため、殺菌剤を入れた水に種をつけてからざるでこし、種だけを取り出す処理を行いました。
ハルニレはもともと発芽率があまり高くないため、木になる種の数が多く、「数打ちゃ当たる」の戦法をとる樹種でもあります。羽の有無で発芽に大きな差があるわけではないと考えられていますが、今回は少しでも発芽率を上げようという佐々木さんの判断により羽を取る処理を行いました。また、水の中に殺菌剤を混ぜることで病原菌を減らし、立ち枯れの確率も抑えられます。
処理後の種はまるで粒マスタードの粒。最後はトレーに土を入れ、粒々の種を蒔きました。

その結果、1~2週間ほどでハルニレの芽が次々と出てきました!さっそく邑サポートの皆さんが地元の方とともに「鉢上げ」の作業を行ってくれました。トレーに蒔いた種が発芽したものを別の容器に植え替える鉢上げを行うことにより、根が伸びる範囲を広げ、苗を大きく育てることができます。

 

■眠れる種、カスミザクラの発芽のひみつ

一方、カスミザクラの種採りを行ったのは大船渡市の交流施設「大小迫つむぎの家」。当日は風が強かったこともあり、小さなサクランボのような実が次々に落ちてきて、20分ほどで大量に集めることができました。
(SNSで配信中の「Hola!宮﨑の樹木ラボ」でも種採りの様子を動画でご紹介しています)

採った種はイコウェルすみたに運び、「果肉の除去」を行います。サクラ類の果肉には種子の発芽を抑制する植物ホルモン「アブシジン酸」が多く含まれており、これが果肉に残ったままだと種子は休眠状態を保ち続けてしまいます。本来は鳥などに実を食べられ、果肉が取り除かれることで発芽のスイッチが入る仕組みですが、人の手で苗を育てるには、この工程を代わりに行う必要があるのです。
通常は目の細かいネットを使い、ボウルなどにこすりつけて果肉を落とす方法をとることが多いのですが、今回のカスミザクラは果肉が薄く、この方法ではうまく取れなかったため、爪で削り取るなどして丁寧に処理を進めました。処理した種はハルニレと同様、すぐに土に蒔きました。

 

■完熟前でも、鳥に食べられる前に…発芽の答え合わせは来春

今回の種採りにあたり、カスミザクラに関しては少し時期が早く、果実が熟す前である可能性もありました。果実が完熟する前は、種子の中の胚がまだ十分に育ちきっていないことや、発芽に必要な準備が整っていないことから、発芽率が下がりやすいと考えられています。
一方で種採りは鳥や動物たちとの競争でもあります。実が食べられてしまえば種は採れず、正確な完熟のタイミングを見極めるのも簡単ではありません。今回は完熟前だった可能性はあるものの、現地に足を運べるタイミングで鳥に食べられる前に採取できたことを良しとし、数を多く採ることで発芽率の低さをカバーする方針で臨みました。実際に種を見てみると胚はしっかり育っている様子で、発芽への期待も感じられました。
カスミザクラの発芽は来年の春。人の手に委ねられた種たちは、はたしてどんな形で応えてくれるでしょうか。その結果を確かめてから、次回以降の種採りに活かしていく予定です。

育てられた苗木は、数年後、住田町および大船渡市の山林火災跡地に植えられます。今後も地域や専門家の方々と協力し、各地の特徴や生態系に適した手法を模索しながら、多様性のある森づくりを進めてまいります。


more treesは、地域の気候風土に適した樹種を選び植林・育林をする「多様性のある森づくり」、法人参加型の森づくり「企業の森」、クリエイターや地域の職人と協働して木製プロダクトの企画・開発・販売や木質空間づくりを手がける「ものづくり/空間プロデュース」など、「都市と森をつなぐ」をキーワードにした取り組みを行っています。森林保全活動へのご参加、ご支援、ご質問などお気軽にお問い合わせください。

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