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植林のコスト

「1本の木を植えるのにいくらかかりますか?」というご質問をいただくことがあります。

ですが、その回答は「一概には言えない」としか言えません。

その理由はいくつかありますが、「多様性のある森づくりのパターン」のコラムの中でも紹介した施業方法による植林本数の違いが大きく関わっています。

植林といっても、
①皆伐地へ3,000本/ha 植えることもあれば、
②強度間伐+樹下植栽で250本/ha しか植えないこともあります。

例えばそれぞれ300万円の費用がかかるとすると、①の場合は1本あたり1,000円です。一方、②の場合は1本あたり4,000円となります。

強度間伐した直後の様子(鳥取県智頭町)。その後、広葉樹を樹下植栽していく

では、安くたくさん植えられる①の手法が優れているのかというとそうとは限りません。②は植林本数の少ないものの皆伐しない分、土地の環境を急変せずに緩やかに森林環境を転換させるので、生態系への一時的な負荷が少ないと言えます。

さらにいうと、強度間伐+天然更新という強めに間引いて更新を促し、天然力を生かして多様な森に転換する手法もありますが、この場合の植栽本数は0本となります。ですので、1本あたりのコストは算出できません。
しかし、労力とコストが低減する上、人間の介入を最低限に抑え、自然の力を生かしたこの手法はまさに人間と自然が共生した手法とも言えます。
実際には降水量、標高、土壌、方角などさまざまな条件等によって施業方針が決まります。植林する場合、樹種や植栽密度(苗木の間隔)によってコストも変動します。

また植林作業は一見単純な作業に見えますが、その前後には

1)地拵え(整地)
2)獣害対策
3)下刈り

のような作業が必要になります。

②のように事前の伐採が伴う場合には、伐採作業に加えて伐採木の搬出作業も伴います。

実はこういった植林に付随する作業の方が苗木代や植栽費用よりも遥かにコストが掛かります。

このように施業方法による植林本数の違いや植林前後の付随作業の有無により1本あたりの植林コストは大きく異なります。「多様性のある森づくり」では、植林本数だけに捉われず、生態系全体の環境への貢献を考えた森づくりを進めています。

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