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コラムシリーズ「森林とカーボン・オフセット」⑤森林を活用した脱炭素経営の事例

産業革命以降の急激な温室効果ガス(主に二酸化炭素)排出量の増加は、気候変動を引き起こす主な原因とされ、地球温暖化による熱波や豪雨、干ばつなどの自然災害が頻発・強大化するなどさまざまな形で私たちの生活を脅かしています。森林は気候変動問題と密接に関係し、気候変動を抑制するための大きな役割を担っています。この連載コラムでは、森林から見る脱炭素について、more treesが取り組む活動の1つであるカーボン・オフセットにまつわる情報を5回にわたり紹介します。

最終回となる第五弾は、脱炭素経営を推進するために森林を活用する方法やこれまで企業を中心に実施いただいたカーボン・オフセットの事例を紹介・解説します。
 

森林を活用した脱炭素経営

企業が森林を活用することで脱炭素経営を推進するにはどのような方法があるでしょうか。
4つの方法を挙げ、事例とともにご紹介します。※企業名敬称略
(一般的に①~④の順番で参加のハードルが低くなります)

①自社で森林を所有し管理する
自社で土地から購入し、自らもしくは林業事業体へ発注し森林を管理する方法です。
王子製紙株式会社を傘下にもつ王子ホールディングス株式会社は、国内外に58万ヘクタールもの社有林を所有・管理し、社有林で実現したCO2吸収量は自社の排出削減分として換算しています。
こうした自社完結型の方法は、自社の方針にあった活動ができる一方で、最も手間とコストがかかるためハードルが高くなります。

②森林保全活動を行う団体と協働する
自ら土地を保有することなく、森林保全団体や自治体などと協業して森林保全に寄与する方法です。
more treesでも「企業の森」プログラムとして、さまざまな企業と協業しています。本プログラムでは単に森林保全活動に金銭的なご支援いただくのみならず、ツアーやイベントの開催、社員研修の場としての利用などさまざまな方法で活用いただいています。
本プログラムでは、ただ植えるだけではなく、それぞれの地域にあった方法を専門家の科学的な知見も取り入れたうえで「多様性のある森づくり」を行っています。
(「企業の森」について詳しく知りたい方はこちら

③オフィス・店舗・ノベルティなどに木材製品を使用する
コラムシリーズ第四弾で述べた通り、収穫(伐採)後の木材を製品として活用する方法です。使用する際には、木材の産地(国産材か外国産材か)や樹種、FSC認証(※)を取得しているかなどを意識してみましょう。
(more treesが扱うプロダクトや木材利用の事例はこちら
※FSC認証…森林管理協議会(FSC:Forest Stewardship Council)が、森林とその森林から生産される木材などの流通や加工のプロセスを評価し、認証する制度。環境、地域社会、経済等に考慮し、持続可能な形で適切に管理された森林から生産された木材などに与えられる。

④カーボン・オフセットを実施する
今回ご紹介する4つの中で最も手軽に脱炭素に取り組むことができる方法です。
カーボン・オフセットの対象は無数にありますが、一般的に大きく4つに分類されています。more treesが提供するカーボン・オフセットサービスをご利用いただいている企業様の事例を交えてご紹介します。
(サービスの詳細についてはこちら 

  1. 自己活動オフセット
    オフィスの電力・ガス・水道使用に伴うCO2排出や、営業活動や通勤などの移動に伴う CO2排出など自らの活動に伴って排出されるCO2をオフセットするものです。
    マーケティング・プロダクトセールス事業を展開する株式会社ニューポートは、2011年より自社の事業活動におけるCO2排出量を毎年オフセットされています。商品の輸入・配送/提携倉庫における商品の保管などの商品に係る排出量に加えて、全従業員の通勤・出張に伴う排出量もすべて算定し、全量オフセットされています。
    2014年にはクレジットを購入しているmore treesの森のある地域のうち、岐阜県東白川村にて社員研修を実施いただきました。こうして地域や森林の様子が実際に目に見えるのも、森林由来のクレジットを活用するメリットの1つです。
     
  2. 会議・イベント開催オフセット
    全日本空輸株式会社(ANA)は、毎年開催している株主総会における会場の電力・ガス使用に伴うCO2排出量を全量オフセットされています。
    イベント関連ですと、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が試合開催に伴うCO2排出量(全公式戦分)のオフセットを宣言したことも記憶に新しいところです。
     
  3. 商品使用・サービス利用オフセット
    商品の製造・使用・廃棄やサービスの提供・利用に伴って排出されるCO2をオフセットするものです。
    ホテル運営を行う株式会社スーパーホテルでは、公式サイトから予約したお客様を対象に、宿泊に伴い排出されるCO2を全量オフセットされています。また、こうした環境配慮の取り組みの一環として、店舗什器や装飾の一部に国産木材を活用されています。
     
  4. 自己活動オフセット支援
    商品・サービスを介して、商品を購入・利用する不特定多数の消費者の日常生活に伴って排出されるCO2のオフセットを支援するものです。
    Pontaポイントを運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングは、SDGsを推進するプロジェクトの一貫で、環境や社会にやさしい活動を推進するアプリを提供されています。アプリ上でのユーザーの活動量に応じて、more treesの森ある地域をはじ全国のさまざまな地域のクレジットを活用しカーボン・オフセットを実施されました。(2021年4月~2022年6月)
    全国にユーザーのいる同社は、全国に広がるアプリのユーザーが取り組みを身近に感じることができるよう、クレジットを購入する地域を毎月変えているほか、 取り組みの象徴として「企業の森」プログラムにも参画いただいています。 

 

さて、コラムシリーズ第一弾の「カーボン・オフセットとは」から始まり、日本や世界の動向、脱炭素経営を進める企業の事例など「森林とカーボン・オフセット」にまつわる情報を5回にわたりご紹介いたしました。
カーボン・オフセットは難解なため、実行に移せなかった方も多かったのではないでしょうか?
本コラムでは、そういった方に向けてカーボン・オフセットの目的や背景、具体的な事例を交えることでわかりやすく解説しました。
少しでもみなさまの理解を深めることにつながるとともに、脱炭素社会の実現に向けた具体的な手段の1つとしてご検討いただけると幸いです。

※本コラムでは、「脱炭素」に焦点を置いて解説しておりますが、森林は炭素固定機能のみならずさまざまな機能を有しています。そうした森林全体の価値に目を向けていただけますと幸いです。(森林の持つ多面的機能についてはコラムシリーズ第二弾で解説しています)
 

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