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【コラム】植える土地が足りない!?

日本、そして世界には木を植えるべき土地は沢山あります。
しかし意外にも、植林できる土地が足りないというケースもあります。

矛盾しているようですが、それはいったいどういうことなのでしょうか?


日本では収穫可能な森林が増えている

日本では、戦後に植えたスギやヒノキなどの人工林の多くが50年~60年生となり、収穫可能な時期を迎えたことから各地で伐採が行なわれています。

林業においては元来、伐採と植林(造林)はセットで行われてきました。
植えて、育てて、伐って使い、そしてまた植える。
この森林のサイクルを維持していくことが、持続可能な森林管理と持続可能な木材資源の供給につながります。

(出典:林野庁)

伐採によって得られる利益が十分あった時代は、その利益の一部を再び植林(再造林)という形で山に投資することが経済的に可能でした。 しかし木材価格が下落し、森林所有者が手にする利益が一昔前に比べて大幅に減った昨今では、次世代への投資をする余力とモチベーションを維持するのはなかなか難しい状況です。 こうしたことから各地で伐採は進むものの、再造林をせず(できず)、放棄された土地が伐採面積全体のおよそ65パーセントを占めています。

このように、植える必要がありながらも手つかずの「未植栽地」は年々増えています。


それでも土地は足りない

なんだよ、植える場所あるじゃないか、とお思いでしょう。

では、それなのになぜ植える場所が無いのでしょうか??

確かに統計上、未植栽地は増えていますが、その多くは私有林(個人所有の土地)であると推定されます。そもそも、所有者の了解を得ないことには外部の人間が勝手に植えることはできません。 仮に了解を得て植えられたとしても、その土地の永続性が担保される必要もあります。

たとえば、せっかく植林しても、その後やっぱりメガソーラーに転用したい、などと所有者が翻意されてしまうと、植林事業そのものがとん挫してしまうからです。

また、公共性の面も重要です。植えた木(立木)が所有者の権利となり、また将来的に伐採を前提とした場合、特定の個人の財産形成の手助けをすることになる可能性もあります。ですので、植林地のベネフィット(便益)がある程度コミュニティにシェアされる所有形態や仕組みが望ましいと考えます。(たとえば、地域で所有する森林:財産区有林や分収林など)

以上のように、はげ山だからといってどこでも植えられるわけではありません。 所有者のコンセンサス、土地利用の永続性、公共性などの要素をクリアする土地は意外と限られます。


海外でも事情は同じ!?

植えるべき土地は海外(特に途上国)のほうがむしろ広大に存在します。何しろ、世界では1秒間にテニスコート15面分の森林が失われているわけですから。とはいえ、全てが安心して植林に着手できる土地とは限りません。むしろそうでないケースが圧倒的に多いのです。

日本では考えられないかもしれませんが、途上国ではたとえ国立公園であっても移民によって森林が開墾され、なし崩し的に占拠されてしまうケースや、複数の人や企業が一つの土地の所有権や利用権を主張して争うケースも少なからずあります。

また政情不安などのカントリーリスクも無視できません。

クーデターや紛争によって、その国で植林事業が継続できない可能性を考えると、植えるべき土地はあっても着手することすらためらってしまう、もしくは途中で撤退を余儀なくされるなんていうことも十分想定されます。


いかがでしたでしょうか?

植えるべき場所はあっても、公共性や永続性を担保できる土地は意外と限られているのです。

日本国内で、公有林・私有林問わず、もしこのような条件をクリアし、かつ多様性のある森の趣旨にも賛同いただける市町村やコミュニティの方がおられたら、ぜひ個別にご相談ください。

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なお、植林に必要な3つの要素についても別コラムで紹介しています。
ぜひこちらもご覧ください。

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